中国駐在(で働く)の日本人の意義〜『ハイコンセプト』を参考に〜

こんばんは。上海よりあらんです。8月も明日で最終日、2010年の夏もそろそろ終わりですね。ぞーたんからもらったバトン、『中国駐在(で働く)の日本人の意義』について書いていきます。

まずはお詫びから。更新遅くなりましたm(__)m。自分と二人と読者の皆さんへの甘さが出てしまいズルズルと一ヶ月経ってしまった。反省も込め今後のマニフェストを掲げます。「何があっても2週間以内に更新」よろしくお願いします。では記事にいきます。

お題をもらって、友人や知人に「中国で働く日本人の意義って何だと思いますか?」と質問を投げかけたところ、

「日本人であること自体が長所、中国のことを理解すれば中国と日本のことを両方知っていることになる。」「日本人だからではなく、キャリアが有るか無いかで僕は自分を判断されたいし他人も判断しておりナショナリティをあまり気にしない。」「日本人は真面目にコツコツ継続的に何かに向きあう習性があるからそこは活かすべきだ。」などの言葉をいただいた。

こんな風に周りの人から意見をいただきつつぞーたんからのお題への切り口を考えていたとき、本棚からふと見つけてきた一冊があった。

『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』 ダニエル・ピンク著 大前研一訳

この一冊、当テーマを考えるのに適しているのではないかと思う。

本を開くとまずP9〜P25に書かれた大前研一氏の以下のような訳者解説から入る。

21世紀にまともな給料をもらって、良い生活をしようと思った時に何が必要か、何をしなければならないか−本書は、この「100万ドルの価値がある質問」に初めて真正面から答えを示した。

経済はグローバル化によって、中国で生産できるものは中国で、ITなどインドでできるものはインドでというように、少しでも人件費が安くすむ地域へ産業は引っ張られる。それを日本でやろうとなると、月給が五万円とか十万円でないと引き合わない。また国内産業を保護しようとしても貿易立国である以上、WTO(世界貿易機構)に準拠しないといけない。日本企業も世界中で生産しているから、安いものがどんどん入ってきて、デフレ傾向に歯止めがかからない。こうして、人件費、すなわち所得は安いほうに強く引っ張られる。
一方のほうはといえば,アメリカのプロフェッショナルに引っ張られる。これは非常に給料が高い。たとえば、すごいトレーディング能力を持っている人が、勤めている銀行をやめてゴールドマン・サックスに引き抜かれて行くと、アメリカ並みの高給取りになってしまう。
このように上のほうはアメリカのプロフェッショナルに引っ張られ、逆に下はインドや中国に引っ張られる。〜
こうして日本は「一億総中流社会」で真ん中に固まっていた時代から、逆に真ん中がだんだん薄くなっていく「M型社会」へ急速に移っている。では、そのとき我々は何をしたらいいのか。また上にいくためにはどうしたらいか。これは三つのことを考えないといけない。
一つ目は、「よその国、特に途上国にできること」は避ける。
二つ目は、「コンピューターやロボットにできること」は避ける。
三つめは、「反復性のあること」も避ける
〜今後はインドや中国と競争するだけでなく、コンピューターやロボットと競争するような仕事も見込みがない。〜
要するに、これからは創造性があり、反復性がないこと、つまりイノベーションとか、クリエイティブ、プロデュース、といったキーワードに代表される能力が必要になっていくということである。


この本はアメリカでダニエルピンク氏によってアメリカ人向けに書かれたものだが、大前研一氏によるこの訳者解説により日本人の中国をはじめ世界での立ち位置についての警報を鳴らす一冊に変わっている。

訳者解説に続き、なぜこれからはハイタッチ、ハイコンセプトが求められる時代になっていくのか、またハイタッチ、ハイコンセプトなビジネスパーソンになるにはどうすればいいのか具体的な方法が書かれている。

ハイタッチ、ハイコンセプトが求められる理由

豊かさのおかげで、多くの人の物質的ニーズは過剰なまでに満たされた。それによって美しさや感情面を重視する傾向が強まり、物事の意味への追求に拍車がかかった。〜
ホワイトカラーが従事する左脳型のルーチン・ワークの大部分が、今ではアジアの国々で驚くほど安いコストで行われている。そのため、先進国のナレッジ・ワーカーたちは海外に委託できないような新たな能力を身につける必要に迫られている。

ハイコンセプト、ハイタッチになるための方法

日本人がこれから一番身につけないといけないのはこれまで重視されていた実現可能性を検証する左脳的役割に加え「右脳を生かした全体的な思考能力」と、「新しいものを発想していく能力」でありそれができるようになるためには「六つの感性」が必要である。

「六つの感性」とは
1,「機能」だけでなくデザイン
〜豊かになりすぎた時代には単に機能的なだけでは不十分。外観が美しく、感情に訴えかけるものを創る〜
2,「議論」よりは「物語」
〜情報とデータがあふれた今日の生活では、議論をしても必ず誰かがどこかで議論の盲点を突き、反論してくる。説得やコミュニケーション、自己理解に肝心なのは、「相手を納得させる話ができる能力」〜
3,「個別」よりも「全体のシンフォニー」
〜分析力ではなく総括力、全体像を描き、バラバラなものをつなぎ合わせ印象的で新しい全体観を築きあげる能力〜
4,「論理」ではなく「共感」
〜論理的思考能力は、人間に備わった特徴の一つである。だが、情報があふれ、高度な分析ツールのある世の中では、論理だけでは立ち行かない。成功する人というのは、何が人々を動かしているかを理解し、人間関係を築き、他人を思いやる能力のある人〜
5,「まじめ」だけでなく「遊び心」
〜あまり深刻になりすぎるのは、仕事にとっても、満足行く人生を送るためにも、悪い影響を及ぼすことがある。「コンセプトの時代」では、仕事にも人生にも遊びが必要〜
6,「モノ」よりも「生きがい」
〜物質的に豊かな世の中。何億もの人が日々の生活に苦しむことから解放され、より有意義な生きがい、すなわち目的、超越、精神の充足を追い求められるようになる〜


ハイタッチ、ハイコンセプトの能力は、ほとんどが基本的に人間に備わった資源であり、身につけることができるそうだ。僕もこの一冊を読んで、自分が今後身につけていくべき能力は、財務、法律、マーケティングなどの知識だけじゃなく、何かを創り上げる創造性だなと思え大変勉強になった。

ただ、この本を紹介するだけでは、お題の中国で働く日本人の意義に答えたことにならない。

おそらく多くの中国で働く日本人が、「六つの感性」を中国文化の中で、中国人の上司、同僚、部下、お客様と、中国語で発揮することの難しさを感じていて、それこそが中国で働く日本人のネックになってくると思う。

六つの感性
1,「機能」だけでなくデザイン
2,「議論」よりは「物語」
3,「個別」よりも「全体のシンフォニー」
4,「論理」ではなく「共感」
5,「まじめ」だけでなく「遊び心」
6,「モノ」よりも「生きがい」

ハイコンセプトの方は日本人は割と得意な人が多いかもしれない。問題はハイタッチだ。言語が違う人達と意思疎通を図らなければいけない。やはり言語ができるということは必要最小条件なのではないだろうか。中国で、中国語を使い六つの感性が発揮できた時はじめて中国で活躍できる(意義を感じられる)のではないだろうか。

また、たまたまこれはPODCASTで拾ったのだけど、ラジオ日経の『夢企業探訪』という注目企業の社長にインタビューをする番組で、日系企業のグローバル化のための人材事業を手がけているエーオンコンサルタント代表取締役会長の大滝令嗣氏の話もなかなか興味深い。グローバル人材の重要性について話されていた。グローバルタレント(GT)という言葉をこれから聞く機会が増えてくるように思うし願う。

要約
■主な業務内容はグローバル人材の教育。(日本の社員が現地で活躍する。現地の社員の育成、国際幹部の育成)
■日本人を外に送り出すだけでは供給がおぼつかない。海外の幹部をいかに本社のタレントとするかが課題。
■ナショナルスタッフという言葉は差別用語。こういう人をグローバル人材にし、日本人の海外赴任者を減らしていく。
■近年中国、ASEANの仕事が圧倒的に多い。
■2030年のグローバル市場ではグローバルタレントを手中に納めた企業が生き残る
■インドのビジネススクールは早稲田のビジネススクールよりランキングが上になっていっている。
■外国人が日本の会社に馴染むには一番大切なのは会社の理念(DNA)の部分を身につけるプロセス。
■日本語の壁があるから日系企業に入っていけない。日本語を話せる人材は海外にあまりおらずアジアの人材の0.1%。極めて狭いセグメントから人材を探さないといけない。グローバル化のために社内語を英語にすることは必要。日本の組織もアジアの国の一つローカル組織ととらえ、その上にグローバル本社を設けそこは英語の組織にすべきではないか。
■2008年の調査では、中国以外のアジア各国では日系企業は人気がある。しかし一旦日系企業に勤めた人の多くが二度と日系企業に勤めたくないというデータがある。
■海外の幹部が日本語ができないと本社の幹部やお客様が日本語しかできないので日本人をキープレイヤーになっている。
■サムソンはグローバルマーケターを増やしている。LGは本社幹部の12人中5人が欧米人。
■日本人の幹部を一人海外に送り込むと年間2500万円かかる。ローカルの社員の50倍のコスト。
是非興味がある方はラジオを聴いていただきたい。


先週まで大学時代日中交流系の学生団体を共に活動した同期がお盆休みを使ってどどっと上海に遊びに来ていた。その一人にD団長という友人がいる。頭脳明晰で学生団体時代からみんなから一目置かれていた存在だ。卒業後は某大手自動車会社に入り、中国関係のセクションで日々白酒を飲んでいる中国プロフェッショナル候補だ。そんな彼と一週間を共に過ごし帰り際に冷静に言われた一言。

「あらんは上海でたくさんの良い出会い重ねているけど、日本人に頼りすぎている気がする。もう一歩中国人コミュ二こティに入り込んだ方がいい。」

一瞬言われていらっとしたけど、中国でこれからもやっていきたいと思う自分にとっては本質を捉えた一言ではっとした。

■中国語を話せるようになる
■中国人コミュニティーに積極的に入り込む

この二つは20代のうちに悔い無くやっておきたいことだ。やはり我々20代はまずは中国語を取得し、中国人の友人と気軽に中国語(もしくは英語)でコミュニケーションをとれることはMUSTだろう。40歳や50歳で日本で数十年の経験を重ねてきて上海で働いている、経験を基に物事を判断できる日本人人材とはまた違った存在意義を示さなければならない。強みは弱みである。弱みは強みである。この言葉を最近聞いたが、経験の無い分、中国でコミュニケーションを重ね経験を積んでいける。これが最大の強みだ。


最後に、「ハイコンセプト」で紹介されている
MFA(Master of Fine
Arts)美術学修士に少し興味がある。MFAはMBA(経営学修士)に代わる今最も世界で注目されている資格だそうだ。MFAについて調べてみたら基本的には美大卒業者が対象。美大生を対象にしていない、幼いころから絵を書くっていったら図工の時間くらいで似顔絵を書いても全然似て書けない、絵の具を使うと何がなんだか分からなくなる絵しか書けない経学学部卒の人間がMFAにアプローチするにはどうすればいいのか、現在調査中である。誰か何か情報あれば教えてください。


以上です。
続いて、川崎のちんむー
『最近、力を入れていること』
でよろしく。