【30000pv記念ゲスト投稿】[蜜]No Mileage, No Flight

『San Ren Xin』をご覧のみなさま、はじめまして。

今回、こちらのブログが3万Hitを達成された(おめでとうございます!)その記念に、光栄にもゲスト投稿をさせていただくことになった、蜜と申します。


■ 簡単な自己紹介
2009年7月から住んでいる上海のレストラン・バー情報を中心にお届けしている『上海大夜総会 -Annex- 』という自身のブログがあり、同年10月、そこを通じて知り合ったのが、ぞーたんさん。
その後、彼を介してちんむーさん・あらんさんとも親しくなり、以来、飲み仲間・ゴルフ仲間・ブログ仲間として日々お世話になっています。

さて、ぞーたんさんからは以前、「上海の19時以降系No.1ブロガー」などという身に余る異名をもってのご紹介がありましたが、この度は、午後のひと時にコーヒー片手に流し読みして頂けるような、そんな感じのエッセイをひとつ寄稿したいと思います。


テーマは「No Mileage, No Flight」
飛行機のマイレージにまつわる話を軸に、徒然なるままに。


■ お題:No Mileage, No Flight
【1】
仮に「フライトと自分との関わり」という視点で世の中のパターンを大別するとしたら、おおよそこのようになるのではないだろうか。

(A) 長旅には興味がなく、必要最低限しか飛行機を利用しないという人
(B) 旅行はしたいが、HIS等の格安パックツアー利用で十分、特にこだわりはない人
かたや、
(C) 家がお金持ちだとか会社で役員クラスだったりするので、飛行機に乗るとなれば毎度ファーストかビジネスクラスな人
あるいは、
(D) 日頃から出張が多く飛行機に乗りまくるため、意識せずとも数万、数十万とマイルを獲得できてしまう人
(E) (D)ほどではないが、計算上あと少しで航空会社の上級会員になれるフライトポイント数に届くため、残りはプライベートの旅行を足してちょっと『修行』すればいい人
一方で、
(F) 残念ながら仕事でのフライトの機会には恵まれないが、航空会社の上級会員資格の取得を夢見て、イチから『修行』を志す人


(E)・(F)で突然出てきた言葉『修行』とは、ここではマイレージ修行のことを指す。
航空会社の運営するマイレージサービスに沿って、多頻度利用客(=飛行距離に応じたフライトポイント数や飛行回数が一定のレベルに達した顧客)へ提供される特典の獲得を目的とした、有償航空券による旅行の俗称である。
こういった旅行は短期間に多回数、狭い機内に押し込められながら飛行機に乗り続けることに耐え、体力と時間と貯蓄を消耗するなど心身の苦痛も伴うため、僧侶の修行に例えられてそう呼ばれるようになったのだとか。
そして、これを行なう者を『(マイル)修行僧』などと時に揶揄して称される。

『修行僧』である彼らが具体的にどんな『修行』をするのかというと、たとえば1年間のうちに、飛行距離で稼ぐ人なら東京⇔沖縄間を17.5往復とかする。日本から北米やシンガポールなどをわざわざ経てヨーロッパへ向かうのを繰り返したりする。
飛行回数で稼ごうという人の場合、「そうだ京都、行こう」というのにJR東海には乗らず飛行機で伊丹まで行き、ついでに(いやこっちがメインか)伊丹⇔コウノトリ但馬間の国内線最短路線にひたすら乗りまくってくる。<東京→那覇⇔久米島間3往復→台湾→那覇⇔久米島間3往復→東京>なんていう謎な経由を挟んでプチアジア旅行気分を味わう。

・・・そう。こういう、一般には理解を得がたい異色な行動を、自腹切ってまでやる人たちが実際にいるのだ。それは私も含め。


【2】
(A)〜(D)に分類される人たちにとってみれば、「一体それは何? なんでそんなことまでするの?」と呆れてしまう心境であろう。かつては(B)の位置にいた私自身がそうであったように。
けれどそんな私が、ふとしたきっかけで(F)の立場となり過去に『修行』を敢行し、さらにはその実績を踏み台に、今年は別の航空会社の上級会員資格獲得を目指してまた『修行』を始めている。

・・・正直、物好きだとは自分でも思う。ある意味マゾかマニアかもしれない。
けれど、何故そんなことを自腹でもやろうとするのか? それにはこんな根拠がある。
「『修行』にかける費用は浪費ではない、翌年以降のフライトへの積み立て=1年間かけて行なう貯金」と捉えることができるからだ。

上級会員資格を獲得したい航空会社にもよるが、マイル単価(航空券価格をマイル数で割ったもの)が安く、費用対効果(航空券価格に対し付与されるマイル数やフライトポイント数が多いもの)の高い路線で『修行』プランを練っていけば、イチから『修行』を始めても大体50万円ぐらい見込めば終わる計算になる。
この額だけ見るとちょっと仰け反るかもしれないが、『修行』を経てなお、これからも飛行機と付き合っていく度に受けられるであろう恩恵を1つ1つ吟味していくと、『修行』することは浪費どころか、さほど大きな出費とも言えなくなってくる。

そもそも、50万円払って『修行』を完了したと同時に、結果として最低でも5万マイル以上、各種特典等の組み合わせ如何によっては7万マイルを超えるほどに、自ずとマイレージが貯まっているはずだ。
そして翌年、めでたく上級会員に昇格し、せっかくマイレージも貯まったところで対象航空会社を利用しまくってフライトしようとする場合、その搭乗者(仮に『解脱者』とでも呼ぼう)にもたらされるメリットおよびそれらを金額換算して並べてみると、おもに以下の図の通りになる。



※上図に示した内容は航空会社によって異なるものも一部含む。


色々と書き並べてはいるが、要するに『解脱者』になればエコノミークラス搭乗時でも上位クラス搭乗時相当のサービスを毎度享受できる、というわけである。

一般に公表されている特典と、上級会員になってみて初めて実感するこれらのありがたみは、心情的に大きな影響があるだけでなく、上図1~4を合計してみても分かる通り費用面においても十分に元は取れており、総じて『修行』にかける50万円は有用な出費と考えられるだろう。
(C)や(D)の人たちにとっては望まずとも手に入るステータスではあるけれど、たとえ自腹で『修行』したとしてもそれほど痛々しい浪費ではない、ということがお分かり頂けたであろうか。

また、上図1に関して補足をすると、上級会員資格の獲得を考えている対象航空会社に『修行』で乗りまくって溜めたマイレージを、たとえば同じアライアンスグループ(現在はワンワールド、スターアライアンス、スカイチームの3区分)に所属する別の航空会社の特典航空券と引き換えられるのは勿論のこと、あるいはアライアンスは違えど提携を結んでいる各社航空会社の特典航空券をもマイル交換という形で用意することが可能な場合があるので、HP等をよく調べてみる価値はある。
『修行』の目的はフライトポイント数や飛行回数を稼ぐことだが、それに伴って増えていくマイルを活用できる術を広く知っておく意味は案外大きい。

それに、(これは個人的に一番魅力的なメリットだと思っているのだが…)『修行』の体験談は旅行話の幅が一段と広がる。話題づくりには事欠かない。
「1日で東京⇔沖縄間を2往復した」だとか、「美ら島をひたすらぐるぐるした」だとか、「乗り継ぎが迫ってて空港からは一歩も出られず、デッキで写真だけ撮ってきた」だとか、「北米路線での最低滞在日数消化中に、ちょっくらイチローの試合を観に行った」だとか、そんなツッコミどころ満載のネタ、聞いたら私なら間違いなく目を輝かせてしまう。これぞ、プライスレスな『修行』の醍醐味と言えるのではないだろうか。



Boeing747 (2007年12月修行時 沖縄・那覇の瀬長島にて撮影)


【3】
ところでちょっと話は変わって、今度はマイレージを使うことについて考えてみる。

80年代初頭、アメリカン航空から始まったマイレージプログラムは、つまり利用顧客をなるべく自社便に囲い込むためのポイントサービスであるわけだが、航空会社にとってマイレージとは、通常、会計上は負債に計上される(もし未使用のまま期限切れになり失効した場合は利益になる)。
近年、上級会員が増えすぎている背景もあり、顧客に貯めてもらった分はなるべく消化させていきたいという向きがあるそうだ。

だが現状、その使い道は意外と限られている。主に、航空券購入時の利用および無料航空券との引き換え、座席クラスの1クラスアップグレード、クーポン券との交換など。(※先の東日本大震災時には、日系航空会社では義援マイルの受付が期間限定で行われた)
近年、少しずつ選択の幅は増えてきてはいるようだが、それだけに留まらず、たとえばもっと機内でマイレージを使わせてみてはどうだろうか? などと思い及ぶ。
キャリアによってはビジネスクラスの食事をエコノミーの乗客にも販売するケースがあるが、これを現金のみでなくマイル充当もOKにするとか。免税品をマイルでも決済できるようにするとか・・・伸び代はまだまだある気がするが。

それからもう1つ。
去年、『マイレージ、マイライフ』なんて興味深い映画がちょっと流行ったけれど、あれはつまり会社の経費を利用して1000万マイル貯め、飛行機に自分の名前を残し、機長と面会するという実にユニークな目標を持った主人公の話。

一方で、実際のところ、会社の経費を使って搭乗した航空会社のマイレージを貯め込んで私的に恩恵を受けていることを良く思わない社員がいることも事実である。しかし、こういった行為を社内規定で禁止していない限り違法性はなく、そこまでを厳密に会社規則で定めている企業もまだ少ない。
・・・とまぁ別に、ここではその是非を問いたいわけではなく、ただ映画も踏まえてちょっとこんな夢を描いてみたりして。

航空会社のコーポレート会員サービスの一環として、社員個人ではなく会社単位でマイルやフライトポイントを貯めることがもし可能になるとしたら(※現状できません)、
そのマイル数ないしはフライトポイント数がある規定値まで貯まったあかつきには、民間の旅客機でのチャーターフライトができます! みたいな大盤振る舞いな使い道を、航空会社が用意してくれたら面白いのに。

中小企業なら特に向いてるんじゃないだろうか。こういうのはもちろん、社長自らが声高に提案すべき。
全社員で飛行機貸切、社内レク。「A320の機内で会社の創立○年記念パーティー」とか。「ボーイング737を借りきって沖縄・札幌あたりに社員旅行」とか。
機体の大きさ・飛行距離に準じて規定値は変わるので、あとは社員のがんばり次第。みんなの搭乗分を一括するから貯まり具合も早くて好調。役員クラスばかりが座席をアップグレードしても、どうせそのぶん貯まっていくから文句も出ない。

そして、ついに晴れて規定値達成 ⇒ チャーターフライト出発。
機体に社名でも入れたいところだが塗装まで変えるのは厳しいので、ならば便名を好きなようにつけられるサービスでも。
既存の便名とかぶりさえしなければ、あとはその会社で自由に語呂合わせを考えてOK。たとえば毛髪関連を扱う企業なら「9696便(黒々)」、某酒造メーカーなら「3740便(皆酔う)」、某建築用フィルム会社なら「4109便(良い膜… ちとムリヤリ?笑)」など。

しかも、もしこの一風変わった社内レクがTVニュースの特集や機内誌などで取り上げられて紹介でもされれば、会社のいい宣伝にもなる。
会社の経費で賄われる出張費から出たベネフィットは、本来会社に帰属するもの。その恩恵が一部の社員だけにもたらされるよりは、全社員に公平に還元されるこんなイベントでもあればみんなも喜ぶし、普段の仕事にも一層精が出たりはしないだろうか・・・?

ただまぁ、現状ではあくまで完全なる妄想なのだけれども。


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以上。
いつもとはだいぶ毛色の違ったテーマでエッセイなんぞを、『San Ren Xin』なる高感度なブログ上に長々と綴らせて頂きました。ありがとうございました。


■ バトン
あらんさんへ。
先日、28歳のお誕生日を迎えられましたね。おめでとうございます。そこでお題は「今の自分のキャッチコピー」で。
あらんさんは日頃から、『三十而立(三十にして立つ)』という孔子の言葉をよく用いられていますよね。また2011年1月に書かれていた渾身の記事『51のやりたいこと』も拝読しております。それらを踏まえた上で、現在のご自分を端的に表す3つのキャッチコピーとその心を、是非ともお聞かせ願いたく。
ただ1点、知られざるあらんさんの意外な一面や、あえて普段は秘められた内なる魅力を垣間見れるような、そんな“スパイシー”な秀作を期待しております!


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