中国人の「あのころの苦労を思えばこんなこと」という感覚

週始め東京から上海へ。10月中旬〜11月の上海は上海蟹が一番おいしい季節。街中のレストランや生鮮市場には深緑をした活きたまま足を縄で縛られた上海蟹が売られている。茹で上げると上海の秋の風物詩橙色の上海蟹となりテーブルに並ぶ。

上海に戻り、ちょうど日本から出張で上海に来ている上海で中国と日本の文化交流事業を多く手がけている上海ご出身のSさん(女性、自分より先輩)と会わせていただいた。上海の新しく完成する芸術街でイベント運営を予定されているそうで、僕も一緒に事業を進めさせてもらい仕事を通じて色々勉強させてもらっている。

実績、人脈共に豊富で中国ビジネスで多くの方が彼女を頼るだけあり、お話される内容がとても興味深かった。中でも活気ある中国を連想されるSさんの生い立ちのお話が興味深かった。

Sさん談----------
上海出身であるSさんのお父さんが学校の先生をしていて大変なお金持ちだった学校には運転手が毎日送り迎え、家に帰ればお手伝いさん付きの生活をして、英才教育を受けていた。厳しい家庭で毎朝4時に起きて勉強をすることを習慣化されていた。

しかし、1966年ごろ国の情勢が変わり財産をすべて没収され生活が180度変わった。それまでの裕福な生活から一転、無一文になり御両親とは離れ離れになった。まだ幼かったSさんではあるが、生活が逆転する風景を未だに覚えていると言う。

その後、日本に留学されたり、ご自身で努力されて会社を興し今の地位を築かれた。

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この話をされた後、Sさんから聞いたこの言葉はとても重みがあった。

「このような苦労をしているので、会社を立ち上げて事業を進め立ちはだかる苦難があっても全然辛いと思わない。どんな辛いことがあっても、あのころのことを思えばたいしたことないことばかりなので明るく振舞えるし悩まない。」

中華料理の会席の場でお話をさせていただいていたが、円卓を回す手と箸を止めて聞き入るすごい話だなと思った。

生涯学び続け社会に貢献するという想いを持たれており、今は朝4時に起きて通信教育でMBAを勉強し最新の経営学を学ばれている。幼いころから4時に起きるようにしつけられているので4時に起きることは全然苦ではないそうだ。(夜は11時ごろに就寝されるそうだ)

中国ビジネスでは1966年ごろ幼かった人が主役になっている。その多くの人がSさん同様に苦難の時代を乗り越えられた人ばかりで「あのころの苦労を思えばこんなことなんでも無い」という感覚を持っているのかもしれない。昨今中国に勢いがある理由の断片を知れた会食だった。